JSD研究発表会
「モデリングによる戦略の仮説・検証プロセス」のご案内
 

国際システムダイナミックス学会日本支部(JSD)では、2002年度から研究分科会活動を始めました。それに引き続き今年度から、研究分科会活動の成果をJSD研究発表会の形で報告し、広く皆様からご批判いただくことにしました。初回は、ビジネス・プロセス・ダイナミックス(BPD)研究分科会が中心になって2003年度JSD研究発表会を開催します。

さて、BPD研究分科会では不確実性が高い事業環境の下で、当初の事業計画は環境の変化に合わせて柔軟に変更する必要があると考え、その計画・実践・見直しの過程でシステム・ダイナミックス・モデルによる仮説・検証のプロセスの活用を試行しました。活動に参加したメンバーは企業に所属しているものの個人的なJSD会員がほとんどなので、当研究分科会の活動は出身企業を代表しての活動ではなく個人の立場での活動としています。参加メンバーは自分の所属企業の中で企業の構成員として外部環境の変化に対応して受動的に動くのではなく、内から能動的に自己変革を目指せる組織人になることを目標に研究分科会活動を計画し実行してきました。

初年度の具体的な目標は、企業内で自ら関係する問題解決にSDモデルを構築・活用してそのモデル上で問題解決の仮想経験知を得ることでありましたが現時点ではまだ道半ばです。しかし、このような企業に所属する個人が視覚化を伴う学習を進めることで企業内にゆらぎを与え、それがいずれは次世代の成長に向けた企業組織の変化に結びつく可能性が高いと考えています。

華々しい成果をあげているわけではありませんが、それが逆に多くの企業に働く人々には身近な共感をもってご批判いただけるのではなかろうかと思っています。ご出席いただき討論に加わり興味をお持ちいただけるなら、2003年度のBPD研究分科会の活動に参加していただいて、企業内での自己変革にむけて共に切磋琢磨できることを願っています。
(文責:松本憲洋 BPD研究分科会幹事)

期日:2003年3月19日(水)13時〜17時30分
場所:中央大学市ヶ谷キャンパス9階会議場
        〒162-8473 東京都新宿区市谷本村町42−8
主催:国際システムダイナミックス学会日本支部(JSD)
    担当分科会 :ビジネス・プロセス・ダイナミックス(BPD)研究分科会
    メンバー   :

            天野佐寿(株式会社日本総合研究所)、伊藤武志(株式会社ニューチャイノベーション)、
         岩澤嘉則(住友生命総合研究所)、魚躬忠則(日本オラクル株式会社)、内山 章(九州電力株式会社)、
         榎本哲也(横浜容器工業株式会社)、香月祥太郎(鳥取環境大学)、小林秀徳(中央大学)、
        
近藤史人(日本HP株式会社)、佐々木登(RSアセット・マネージメント株式会社)、末武 透(朝日監査法人)、
    
手塚博之(日本HP株式会社)、戸並 隆(株式会社アルゴ21)、松本憲洋(有限会社POSY)、
    
水内啓介(IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社)、宮本善文(石油公団)、
        
森岡圭太(SAPジャパン株式会社)、森田道也(学習院大学)、山口庸一(三鍵経営研究所)

参加申込  :以下の情報を jsd_forum@egroups.co.jp までお送り下さい。参加証をお送りします。なお、参加費は無料です。
         名前, e-mailアドレス, 所属, 〒, 住所, 電話番号

プログラムと概要 :

13:00-13:30  ビジネス・プロセス研究の意義 :森田道也(学習院大学)

ビジネス・プロセスの三要素とその相互関係について整理し、企業の将来は学習力によるビジネスプロセスの改革の継続に依存すると説く。

13:30-14:00  意思決定の非ブラックボックス化 :宮本善文(石油公団)

意思決定に係るシステム(判断基準とウエイト・選択肢・評価)をDecision Matrixで表すだけでなく、モンテカルロ・シミュレーションで幅をもった「数値」で評価することで、最適選択肢を視覚的に表現する。さらに、その「数値」をシステムダイナミックにより、@時間軸で動きを見たり、A恣意的に(影響を加え)「数値」を変化させることで最適選択肢を変化させることができることを解説する。

14:00-14:30  為替リスク管理とSD  
               岩澤嘉則(
住友生命総合研究所)、
               佐々木登(
RSアセットメンージメント

近年、日本企業でもビジネス・リスクの管理が、経営管理の中で重要視されるようになってきた。しかしながら、そのやり方は静的で、リスク相互の関係や、間接的な影響などを考慮した管理が行われているわけではない。SDをこの分野に応用することで、ビジネス・リスクをより総合的にかつ動的に把握できる。

14:30-15:10  特別講演 "Complex Eco-economy System"
             Pawel Bartoszczuk
                 (System Research Ins. of the Polish Academy of Science)

                   Yoshiteru Nakamori
              
(Japan Advanced Institute of Science and Technology)

収益・汚染・非再生資源に焦点をあてたSDモデルについて、条件を変えたシミュレ-ションを行った。非再生資源を再生資源に置き換えられる可能性について洞察する。

15:10-15:20  休憩

15:20-15:50  フィードフォワード・フィードバックと経営の関係
              
内山 章(九州電力株式会社)

売上高などの変動要因に対し,経営手法として,制御理論における「フィードバック」「フィードフォワード」とは何なのか整理するとともに,これらを導入した場合,どのように経営がSDのマクロモデルを活用し,改善されるかを検証する。

15:50-16:20  モデル・ベースト経営 :松本憲洋(POSY

情報通信技術の展開により空間的・時間的なバリヤーが消滅するとともに、グローバル化と国内の規制緩和も進み、他社を倣う事業推進では事業の持続が困難になってきている。こんな中、企業経営はPDCAの業務管理ループだけでは社会・経済環境の急激な変化に的確に応答できず対応策が後手後手に回る。それを回避するには、戦略の実践過程で戦略そのものも繰り返し修正・変更する「ダブルループ戦略マネージメントループ」の導入が必要である。このようなオペレーションを具体的に示すために、ベーカリーモデルを例にバランスト・スコアカード経営のフレームワークの下で、事業戦略の立案、中期計画、実行、評価、戦略の見直し等の一連のビジネス・プロセスについてシミュレーションを交えながら解説する。

16:20-16:50  SDによるリユースとリサイクルの考察 
              
榎本哲也(横浜容器工業株式会社

環境問題が叫ばれている昨今、大量生産、大量消費、大量廃棄の経済システムから循環型の経済システムへの変換が迫られ、企業は次々とリサイクルに取り組み始めている。即ち、リデュース(廃棄物抑制)、リユース(再利用)、リサイクル(再資源化)という「3R」が主体である。従って、これら3主体の組み合わせを如何に最適化するかが大きな経営課題であり、社会問題となっている。換言すれば、自然との調和を維持しつつ、効率を指向するリバース・ロジスティクスの宿命的な問題へと発展しているのが実情である。特に、リバースロジスティクスの体制によってリユースとリサクルの優位性が変化することに着目し、システム・ダイナミックスを利用して企業の経営戦略を提案する。

16:50-17:20  企業における定性的要因の及ぼす影響のモデリング 
         近藤史人
(日本ヒューレットパッカード株式会社) 

成熟期を迎えた日本の企業社会では、物を作れば売れる時代は終わり、人のもつ知識、意欲など有形資産よりも無形資産に価値創造の主体が移りつつある。人・物・金の中で、人の経営に及ぼす影響が重大なものであると分かっていながら、数値化しやすい、在庫、リードタイム、売り上げ、経費などの指標に経営者の関心は傾きがちになる。数値化しにくい人間の側面をいかに合理的にモデリングするかに関心を持ち、SDでのモデル化を試みた。


以下の論文は発表者が業務の都合で発表会に出席できないため印刷資料としてのみ配布します。

収録論文    システム思考のモデルをどう活用するか
               
伊藤武志(ニューチャーネットワークス)

システム思考における因果ループ図と時系列変化グラフにより物事の動きの全体像、すなわちシステムは明らかになる。しかし、実生活や経営においてはそのシステムに含まれる問題や課題の解決がなされなければ意味がない。システム思考の用途について考察する。

収録論文    ビジネス・リスクの管理 :末武 透(朝日監査法人)

近年、日本企業でもビジネス・リスクの管理が、経営管理の中で重要視されるようになってきた。しかしながら、そのやり方は静的で、リスク相互の関係や、間接的な影響などを考慮した管理が行われているわけではない。SDをこの分野に応用することで、ビジネス・リスクをより総合的にかつ動的に把握できる。
                                    以上

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